夢の果て

妄想があった。

才能と資金があったらウエディングドレスショップを開く。レースと生地はイタリアに買い付けに行く。

オーダーメイドなので、「あなたを1番綺麗に見せるドレスを作るわ」

そして、辛口オーナーは容赦なく言う。「あなたの希望は、分かった。でもそのデザインは似合わないわ。こうしたら」

本人のイメージするものと果たしてそれが似合うかどうかは別であるのは、花嫁比べで申し上げた通り。

妄想は、高じてパタンナーの学校にまで通ってしまった。ただし、あくまで自分のためのウエディングドレスを作るためのものではなかった。

(それまでに子供は産み、シングルマザー奮闘している筈だった。余計な話)

アパレル業界へ転身か、と、野望は膨らんだが、少々学校へ通ったくらいでパターンが引けるようになる訳でないことを実感した。

代官山の山手通りに面してずっと憧れてたドレスSHOPがあった。常に56着展示してあり、代官山に行ったら今でも必ず一時眺めていく。

着る予定は全くなかった。

ところが。

何と、着る予定が出来た。

ならば、是非とも行かねばならぬ。10年以上飽かず眺めていたからには。

着たいデザインはとっくに決まっていた。が、レンタルにはない。

「買ったらいいよ」

大分悩んだらしい。(実は、その辺りのやりとりは全く覚えていない)

「お嬢さんが産まれたら、七五三のドレスへのアレンジも出来ますから」

その一言で後押しされた。

しかし、ベルばら漫画を繰り返し読み、真似っこして描いていたから、1回は着てみたい「だんだんドレス」もあった。

一応試着はしたが、どうやっても自分が着てよいものに思えない。

衣装選びは、結婚式よりも余程楽しいものだった。

着用後、クリーニングし、プレスされきちんと保管出来るようにしていただいた。

その後、七五三ドレスになることなく、保管されたまま時は過ぎる。

ところが、何回も引っ越しを繰り返すうちに意外とかさばることに気づいた。

「あんなに何十年想い続けてたのにねぇ」

今や、持て余し荷物になり果てている。

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