「そんなに大切なものなら、外に持って行かせないで」(A君の母親)
小学生のカードゲームのトラブル。
息子の大切にしてるカード(レアなカードで、高額で売買されているらしい)をA君が盗ったことが明らかになり(一緒にいて、盗んだのを見ていたB君が教えてくれた)、母親がA君を連れてカードを返しにやってきたときのことだ。
謝罪の言葉があるだろうと思ったが、それは常識人の考えだった。
実は、事実を突き止めるのも、母親VS母親ではうまくいかなかった。子供同士のこと、親が介入したくはないと思いつつA君の自宅に電話したが、のっけから「ウチの子がやったって言うの」と絶叫され話にならない。
困りは果てている私を見かねた夫が電話を替わったら、しばらくしてカードを返しに来るという。
「何て言ったの?」(私)
「うちの子に何度も確認したけれど、知らないっと言っている。息子が犯罪者みたいな変な言いがかりをつけるのはやめてくれとヒステリックに返してきた」(夫)
「それで」(私)
予想通りの展開で、「A君が取ったとは、私も思ってないです。子供同士のやり取りだし、子供の言葉なのであてにも出来ないですし」(夫)
「そうでしょ、私のようにお宅のお子さんにもよく確認してくださいね。」(A君の母親)
「そうですよね、そうします。でも、我々大人にっとっては唯の紙ぺっらでも、ショップでは何万円もするらしいので、今回は弁護士を立てて、学校にも相談しようと思うんです、と話したら、エッと声を詰まらせてしばしの沈黙のあと、もう一度、確認するから少し待ってくれだって」(夫)
しばらくして、見つかったので返しに来るという電話がきた。私には想像もできない展開だった。さすがに夫もこんなにうまくいくとは思っていなかったらしい。(当然、弁護士や学校に相談するというのははったりである)
「返しに来た時、多分文句を言ってくるので、取り合わない方がいいよ」と夫が付け加えた。
人のものを盗って、返しにくるのに、謝罪はあっても、文句を言われるはずがないと思っていたら、冒頭のように怒鳴りつけられた。まったく理解不能である。
「正直者には、くせ者の心理が分からない。その点、くせ者にはくせ者の心理が推測できる」と胸を張って夫は言う。(褒められたことでもなさそうだが)
私は、全く、正直者だ。