引っ越し物件

 コロナの所為でジムがお休みになり、運動不足解消と称して夫と夜に散歩をしている。

一応将来的に自宅をどこに持つかを考えながらの近所の徘徊、いや散歩だ。

 今更土地勘のないところに行きたくはないし、田舎の牧歌的な所だけを見てれば幸せだが、それ以上に不便さを痛感してるので、田舎に引っ込むつもりはない。

 嫌になったら引っ越すなんていう、永遠に若い時のような暮らしは出来ないので、そろそろ本気で考えなければと、いうところ。

 一時、夫の単身赴任中息子と2人暮らしをした。学区は変えずに駅徒歩5分以内を追求。一時的だからと最低限の条件を満たすところを探すと選択の余地はなかった。

 内装はきれいでも築年数が古い分、水回りが昔作りで、時々腰痛の出る私には地獄のお務めの如き日々もあった。

 しかしながら、スーパー管理人さん在住の大当たり物件で、小学生の息子は随分助けて頂いた。リタイア後かなぁという老年期のご夫婦が住み込んでいらして、小学生男子の所持品管理の不確かさ、家の鍵を忘れたと言っては何回自宅を開けて頂いたことだろうか。

 毎回報告すると私に怒られると分かっているので、私の掌握以上に管理人さんに泣きついていたに違いない。

 そのほか、事前のエアコン設置の立ち合い。引越当日のウオシュレット設置。洗濯機トラブルの解消。水回りトラブル諸々などなど、対応して頂いた。

 それだけではない。たまたま塾の先生が息子のお迎えに来て下さったところ、すぐに誰何されましたとの警備力。

 とどめはなんとマンションの住人のお子さんのお迎えまでしてらした。

 そういえば玄関ホールでよくお子さんと遊んでらっしゃるところをお見かけしたが、あれも自分の孫でもないコの子守だったのか。

 ある種、ホントにスーパー物件だったのだ。 

 ただ、怖いこともあった。コストを抑えた賃貸物件の悲しさ。ある時から隣の夫婦げんかか奥さんの泣き叫ぶような声が夜な夜な聞こえるようになったのだ。 

 コレ、刃傷沙汰とかに発展して隣だからって助けを求められたらどうしよう。警察間に合わないとかもありえるぞ。

 思い余って管理人さんに相談してみた。「心配ない。あの旦那もうすぐ出てくから」こともなげなお返事だった。うーん、確かにあれは胡乱なご主人だった。 

 スーパー管理人さんのお陰で、誰もが気持ちよく挨拶を交わすマンション内で唯一挨拶出来ない人だったから。しかし、管理人さん全て掌握済みだったのか。

 中学生になった息子は今だに「あのマンション良かった!」と、懐かしがっている。 私は、水回りの古い物件はコリゴリしてるけど。

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