ディズニー沼

 世には、好むと好まざるとに関わらず変わらざるを得ないものがある。

 子供が生まれて生活が一変した。

 綺麗なママ頑張ってますと言ったママタレの話ではない。根っからの庶民の話だ。

 ほぼ変わりようがなかったのは、仕事くらいだ。

 責任もノルマも増えはすれ、減りはしない。制度として育休や育児時間はあれど、取れるかどうかは、その時の上司の意向に左右される。

 たまたま、育休が明けた時点で夫が単身赴任という、最悪のタイミングが重なり、一体その時どうやって暮らしていたかも覚えていないくらい忙しかった。

 もちろん、自分の希望した分だけ休暇をもぎ取っていく人もいる。

 何たって権利だから。

 私の感覚的には女性の上司より、男性の上司の方が取りやすいような印象は、ある。自分が経験していないことは強く出れないのかもしれない。

 それはさておき、変わったことは、ディズニー好きになった事だ。

 子連れでは、カッコ良いレストランもシティホテルも非常に居心地が悪くなった。飛行機に乗るのも随分気を使う。

 要求すればいずれも便宜を図ってもらえるであろう。

 しかし、いつも以上に子供の言動に注意し、いちいちお願いをしないと子供用のカラトリーさえ十分に揃わないというのは、とても疲れるのだ。

 いつもより、服装も気を遣い、お金も使って倍以上疲労するお出かけって一体何?

 独身の時のように好きに出かける生活を追求するのが無理だと悟った。

 息子が1歳半を過ぎた頃夫が言った。

「ウチもディズニーデビューしてみる?」

 独身の頃全くと言って興味がなかったので、あのネズミのどこが可愛いんだろうと思っていた。ミラコスタ泊まったよ!と言う話も私ならパークハイアットに泊まるなと思って聞いていた。なのでディズニーに行くという発想が私にはまるでなかったのである。

 ところが、急転直下とはこの事である。

 ディズニーに行ってみて分かったことは、お出かけが断然楽チンなのだ。おまけに息子は、あの着ぐるみに大喜びしたのだ。(なかには、あの着ぐるみが怖くて泣き出す子がいるらしい。冷静に考えたらその方が真っ当かもしれない)

 子供がとても楽しそうにしているのを嬉しくない親はいないだろう。着ぐるみの方々も小さい子にはますます優しい。

 子連れウェルカムのシチュエイションとは、非常にありがたいものだというコトがわかった。

 元々子連れのお泊まりとは、荷物がやたらと多くなる。使い慣れている日常生活用品を一式持って移動することになるのだから。

 一番安心したのは子供が手洗いしやすい洗面台があることだったかもしれない。お部屋にも丁度良い脚台が準備されている。

 そして、しまった!あれを忘れた!という時にも代替え品がすぐに手に入る。

 お出かけ感満載の場で、ディズニーホテルに宿泊すれば、1日遊んだ後も夢の余韻に浸れる。少々オーバーだが決死の覚悟で泊まりの準備をする必要がないのは、本当にありがたかった。

 かくして、どっかにお泊り行こうか、じゃあディズニーにと、ディズニー沼に片足くらいは突っ込むことになったのだ。

 出産され、以前と同様に美しい憧れの先輩の口からしまじろうとか、アンパンマンとかの単語が出できて、子供って何て破壊力だ。と、ちょっぴり哀しくなったことを思い出した。

 あの美しい先輩ですら、変わったのだから。

「キャラ変わったよねー」

 (若干ほうらみたコトか、と、侮蔑のニュアンスが含まれている気がする)

 私が変わっても当然、である。

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