大草原の小さな家シリーズが大好きだ。最初に読んだのが小学生で、今でも折に触れ読んでおり既に数十年経っている。その中で今一番読み返しているのが『長い冬』である。
文字通り長い冬が7ヶ月間も続き(吹き荒れる吹雪で外に出られず、日々の食事や暖房用の石炭にも事欠く、一歩間違えば飢死か凍死が待ち受けている)過酷な日々をプライドを持ち耐え忍び、やがて春が来る物語だ。
以前はインガルス家のこの貧しい感じが若干自分の体験と被り、余り得意なくだりではなかった。
背丈が伸び、去年のドレスの裾出しをしてもツンツルテン。それを心ない学友が囃し立てる。(小麦の収穫がないと新しいドレスの生地が買えないのだ)
幼稚園の制服の麦わら帽子が自分が1人だけお古のため変色していたり、近所のお兄ちゃんのお下がりの青い自転車(その頃の女子の自転車のカラーはピンクとか赤とかに決まっていた)に乗っていたため「男自転車」と囃し立てられたりした私には思い出したくない記憶なのだ。(お古事件は書き出すとキリがない。しかし決まって囃し立てるのは勉強の出来ない子に決まっていた。賢い子はやらない)
逆に、ローラの夫になるアルマンゾは裕福な少年時代を過ごしている。今からするととても贅沢な食生活だ。農薬を使わず作物を栽培し、それを餌として与え、十分に戸外で過ごした牛や豚や鶏を冷凍や加工して、ベーコンやソーセージ、バターなどを作る。食品添加物なんていう心配もない。自分で育てた小麦でパンやお菓子を作るなんて考えただけでもワクワクする。
ただ、炭水化物と脂肪の多い食生活にちょっと抵抗があるが、それだけ寒さとか労働量とかにエネルギーを使う時代だったのだろう。
アルマンゾの家庭の食卓は実に豊かで読んでいて楽しくて好きだった。どちらかというと質素なローラの家の食卓の話は繰り返し読まなかった気がする。
ところが、である。子供が出来てから、この質素な生活のインガルス家でどうやって品性のある子供たちが育ったのだろうと、それがうらやましくて何回も読み返すようになった。貧しくてもつらくても神を信じ、希望を捨てず、あの食事にも事欠き、狭い1室に閉じ込められた(何室も暖房できる石炭はすでになく、唯一ある干し草を束にして燃料にしてる)長い冬でも文化のある人間としての矜持を持ち過ごしている。言うのは簡単であるが私にはそんなふうに子供を育てる環境を作り出す自信は全くない。信じるべき神の有無はさておき。
長い冬は、今のコロナ事態以上に外出するのは命がけなのである。
実は大草原シリーズは非常に深い読み物であったと考えさせられている。今や自分の目線はローラではなく、その父母の人間としての姿に移っている。