あこがれの主任がいた。
終始穏やかな印象で、上司の係長も強面のスタッフも皆が頼りにしている。他部署も主任が出ていくとすんなりまとまる。
文句言いのクライアントも主任が対応すると態度が軟化する。
係長は怖かったので調整というより相手を黙らせるといったニュアンスの方が強かった。
決してバリバリと音がするような仕事をする人でないが、いると皆が安心して仕事ができるという雰囲気がフロアに伝わるような感じだった。
私はいたいけな新卒だったので、目の前の自分の仕事をこなすのが精いっぱいで、周りがあまり見えていなかった。
その中でも主任のことだけは印象に残っている。
おそらく、勤務上のことだけでなく、プライベートのこともいろいろ気にかけてくれたのもあると思う。
今でも、その時の主任を囲んでのメンバーで食事会をしたりするくらいだ。
自分がいい加減その時の主任の年齢を超えてしまっているのに足元にも及ばない。
そして、はたと気づいた。
今どきの若い人たちにとって自分たちは、あこがれるような先輩に果たしてなっているのかしら。
失礼ながら、自分が年を取ったせいかあんな風に憧れる人って周囲に存在していない気がする。
バリバリ仕事をする人はいる。
でも、怖くて近寄れなかったり、ひとりで仕事してれば、と思ってしまったりする。
それって不幸なことかもしれない。私が単に年を取って見方が変わっただけなら良いけど。