受験狂騒曲vol.3

 夫は変わっている、と、思う。

 仕事が思うように行かず、ストレスがたまると勉強を始める。

 何の勉強って、5教科の勉強である。

 まあ、飲み歩くでなし、パチンコに行くでなし、不審な行動をとるでもなし、無駄使いする訳ではないので放っておいた。無害なストレス発散に思えたから。

 しかし、私が仕事と育児でヘトヘトな時も息子の面倒を見るでもなく勉強をし始めるのをみるとあんまりではないかとは、思った。

 (最悪の時は、夫は息子を連れて自分の実家に避難していたが)

 ところが、である。有害かもと、思った夫の趣味が初めて役に立った。

 息子の中学受験のときである。

 彼のキャラに合わせたのんびり塾に行かせた結果、天王山の夏休みになっても一向にエンジンがかからない。

「え!ちょっとやばくない?」

 夫婦で慌てた。これでは全然受験本番の2月に間に合わないじゃないか。本人は夏合宿も楽しかったようとのんびりしているのである。

 受験すると決めたのであるから、まずはやれるところまではやろうと塾任せを反省し、方向転換した。

 自宅塾の開始である。勿論塾長はパパである。

 夫の夏季休暇中から息子の隣にびっちりつきっきりで勉強を始めた。

 この時のために、参考書や問題集はほぼ集めており、夫も読み込んでいたのだ。

 この時期から土日は、9時間は勉強していたと思う。 

 平日も学校から帰って来たら塾には行かせず、夫が出した課題をやっておく。その時期、職場が近かった夫は仕事が終わるとすっとんで帰ってきて息子の横に張り付いていた。

 何をやっているかといって、有名中学の問題を解いていく。

 単なる知識を問う問題ではない。

 現代文の要約はやっていないと書けるものではない。

 社会も資料を読み込んで自分でまとめなくてはいけない。

 当然、その時代背景の知識はおさえた上でのことだ。

 数学が苦手な私は、算数に至ってはお手上げだった。

「これって、ここXに置き換えてやっちゃいけないの?だいたいコレ、ホントに小学校レベルの問題なの?」

「小学6年生の問題だって思うなよ。既に中学受験ていう数学の科目だと思えって」

 私には、中学でやったか、高校でやったのかも既に見分けがつかない問題ばかりか、やってもいない問題もある。

「だから、いくら頭いいひとも久しぶりだとどうやったっけって解説見ないと判らなかったりするんだよ。特殊な科目なんだよ。中学受験で方程式を使ってはいけないし、学習範囲を超えて自分のレベルで解いちゃダメだから」

 夫も参考書を確認しながら、息子に解説をしている。

 このためにキャスター付きのホワイトボードも買った。

 ヘェ〜、あの子育て中バトルの元が初めて役立つ日がきたのた。

 そしてこれが、1月31日まで続くのだ。(塾には、費用を払い込み続けて結局、最後のお祝い会にしか行かなかった)

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